ホームレスの方のおうちの中って、みたことありますか?
ホームレスのおうちって、単語がおかしいですが(笑)
まだ学生の頃、アルバイトが終わり、少しだけ夜桜を見て帰ろうと公園によりました。
するとそこでは先におじさんが夜桜を楽しんでいました。
「桜きれいですね」と話しかけると(そういう無遠慮なところがあります、私って)「そうですね」と紳士的な佇まいのおじさん。
互いに缶ビール片手に、少し会話をしていると、おじさんこの公園に住むホームレスだということがわかり、私の心は警戒心と好奇心がごちゃ混ぜになった興奮状態!
おじさんは一見してはホームレスとわからないくらい身綺麗にしていたこともあり、
好奇心に負けた私は、「おうちってどんな感じなんですか?」と聞いてしまった。
気をつけろ、女子大生!!
そして招き入れられた、人生初のホームレスの方のおうち。
段ボールで上手に組み立てられた家の入り口には、扉のようにしっかりとした板が立てかけられていました。
カプセルホテルくらいのサイズはあり、大人が一人寝たり座ったりするには十分な広さ。
見た目と同じように、整頓されていて、一番目を引いたのは部屋の一番奥に並べられた本でした。
何十冊かきれいに並べられていて、床には読みかけと思われる本も何冊か積まれていました。
流石に長居するのは違うと感じ、もう一度外に出ておじさんと歓談。
ほとんど自分のことは話さない方でしたが、元社長さんだったこと、もう家族には会っていないこと、本が大好きなこと、夜桜が大好きなことを教えてくれました。
こんなにきちんとしている人がホームレスになることがあるんだ。
これは衝撃的な事実でした。
そして、ビールを飲み終わり、「そろそろ帰りますね、またきます」と言うと、おじさんは「もうきちゃダメですよ、きちんと勉強して、しっかり働いてください」と言いました。
優しい口調でしたが、もう来てはいけないんだとわかりました。
そしてどこかでおじさんをかわいそうと思ってしまった、自分の傲慢さを反省しつつ、私はまた普段の生活に戻りました。
それからもその公園のそばを通る時は、おじさんのお家があるかどうかをチラッと確認していましたが、その夜以来私はその公園を訪れることはなく、おじさんとも会うことはありませんでした。
私は、おじさんから何かを学んだような気がしています。
おじさんの顔は思い出せませんが、おじさんの本棚と、その時の夜桜の美しさは何度も思い出すのです。
そして「ちゃんと勉強して、きちんと働こう」と思うのです。
おじさんありがとう。
さぁ、今日もきちんと働こう!!